エレベータの音が小さくなっていく……カイトが去ってもまだその場に立ちすくみ頭の中ではいろんな思いが駆け巡る
一一一そうカイトが言っている事はきっと正しい事なのだろう。だがそれでも……
そう思った時……エレベータの音が大きくなって近付いてくるのに気づき思わず扉の向こうから出てくる人物に期待する。しかしその扉から来た人物は期待とは違う人物…
「……ハイデル氏…どうして…」
一一一カイトが戻ってくるはずないと分かっているのに……俺は……
期待はずれのようなその声にハイデル氏は怒りそうになったがサリエルの沈んだ顔を見ると怒りの言葉さえ出て来ず
「……あのカイトとかいう奴がお前が倒れていると言っていたのでな……だが無駄だったようだな」
自分の身を案じて来てくれたのか?意外なその言葉に驚きを隠せないサリエル。そんなサリエルの顔をみて照れくさそうに
「ふん!!お前にはいろいろと弁償をしてもらわねばならんからな!!」
いつもと変わらない言葉だが、どこか優しさを感じる。そんな優しさに甘えてしまい昔のようにハイデル氏に語りかけてしまった
「………なぜ俺はいつも過去を振り切る事が出来ないのだろうか……?もっと割り切った生き方や考え方をしたいのに……」
意外なサリエルの言葉に驚きつつも、いつもと違う様子に少し戸惑いながらもハイデル氏は語るように言う
「……俺とお前の違いがなにか分かるか?」
「……違い?」
そう質問するハイデル氏の顔を見ながら考える
……俺との違い……違うと言うなら生き方や考え方そして根本的な所から違うような気がするが果たしてそれが答えなのだろうか?
答える事が出来ない様子にハイデル氏の口が開く
「俺とお前の違い…。それはお前は過去を見て生き俺は過去を振り返らずに生きている」
「……」
「お前は過去をいつも見ている。だが過去を振り返ると言う事はその過去とは違う未来を進める事も出来ると言う事だ。そしてお前は過去を乗り越えていく……そうだろう?」
ふと小さい声が聞こえる……それは幼い自分の声
一一一さあ、………行こう
その言葉に涙が出て来て止まらなかった。なぜ今まで気付かなかったのだろう。過去は未来を未来は過去を変える為にあるというのに一一一一。そう諦める事はないのだ。間違えれば違う道をただ行けばいいのだと。簡単でそして何と難しい事だと思いながらも自分自身の気持ちであり決意に気付く。涙を流しながら
「ハイデル氏、私は…………貴方の生き方に憧れた事もあった。でも私は貴方のようには生きれない……」
そのサリエルの言葉に賛同するようにハイデル氏も
「俺もお前のような生き方が少々うらやましく思った時もあった。だがお前のようには生きれないし生きたくもない。」
お互いに考え方も生き方も違う2人。だがなぜかお互いに認めあうものが存在しているのも確かだった。それが昔共に歩んだ時もあったからなのかは分からないがきっとそれは分からなくても良い事だと……そう今はそう思う。
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