マスターの最後の命令の記憶 一一一一一一一一
「…トマ、私の息子だ知っているだろう?」
マスターが私に語りかける
「ハイ、マスター」
「……今度からこの子がお前のマスターとなる…」
寂しそうにつぶやくマスター。私を造った人の声の記憶が蘇る
一一一一一一一 歳をとり死期を感じると今度は違う事を言ってきます
マスターは人でいう所の歳をとった……と言うべきであろう。だが私にとってはマスターはマスターであり私のプログラムはマスターの命令が最優先事項として造られている……
「記憶シマス。条件等ガアルナラ提示シテ下サイ」
マスターはうなずき条件を言う
「私がマスターとしてプログラムした最初の2つの登録と同じ事をする事が条件で必ずマスターと呼んだ者とマスターと呼ぶ者とトマの3人だけである事が必須条件である。他の者がその行為を見る事も聞く事も許されない」
「了解致シマシタ。」
「又この条件に関しては今後一切口にする事は出来ない。最優先事項とする」
「了解致シマシタ。最優先事項トシマス」
……そして契約とも言うべき行為は繰り返され私はその度に新たなマスターを呼び仕える。しかしそれも又、私の本当の主人であるマスターの命令があってこその行動であり例えもうこの世に存在をしなくてもそのプログラムに変更はありえない。それが私が造られた理由であり存在する意味なのだから一一一
サリエルは事務所に戻ると即座に依頼主であるカイトの携帯に電話をいれる
「……現在お掛けになっている電話番号は電源が切られているか電波の届かない場所に……」と電話サービスセンターからの言葉が聞こえてくる
一一一通じない……帰りの列車の中なのだろうか?……少し早くかけ過ぎたのかもしれない……だがしかし…なんなんだ?この不安は……??あの時も不安だったはずなのに…なぜ俺はあの時カイトを1人にして帰ったのだろう?……
後悔をしつつも、どこかで大丈夫だ。気にし過ぎだ。と思う自分もいる。
その時、また泣いている子供の頃の自分が蘇る……しかし今度はだっこ人形を持っていない……ただ泣いているだけ……
首を横に振り自分自身に言い聞かせる
一一一一一分かっている!後悔はしたくない!!
すぐ事務所を出て車に乗り込み車のエンジンを掛けながら携帯で屋敷に電話をかける。屋敷にはすぐに繋がって屋敷の主人であるハイデル氏に取次いでもらう。
「……何のようだ?」
彼のいつもの仏頂面な返事に心無しか少し安心をする。
………カイトだけでなく俺はこいつの心配もしていたのか?
意外な自分に少々驚きながらも用件を手短に話す
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