ページ 1 2 3 4 5 6 7
表紙 8 9 10 11 12

光りがさすことのない地下の部屋……手術室のベットのような鉄の台に寝かされ頭にはいろんなコードが差し込まれている。電源のコードも繋がっているので意識だけはあるのだが頭にコードがある以上むやみに動くことも出来ない。それ故に今、人がいない事を確認して出来る事といえば記憶されているデーターに損傷がないかどうかのチェックのみ。まずは最優先事項の記憶データーのチェック……本当の主人(マスター)である人の最初の記憶……それはまるで人から見ればまるで映像か夢のようなものに見えるであろうもの…


 最初の記録 一一一一一一一 

ジージー……外から声が聞こえてくる

「私が望むのは自分自身のみに仕える機械人形だ」

若い男性の声…

「若い人は皆そう言いますが実際、歳をとり死期を感じると今度は違う事を言ってきます」

そして…これは私を造ってくれた人の声…
まだ最初の方の段階だったらしく電源は入ってはいるが、まだ眼が開く事が出来ず声のみしか聞こえない……そして電源が切れる…


 私が造られた目的の記憶 一一一一一一一一 

今度は人の顔が見える…そして頭の中で何かのプログラムがされる……
以前、聞いた事のある声……

「この者の眼を見て頂けますか?」

……そう、この人は私を造ってくれた人……だが私に言っているのではなく私の目の前にいる男性に言っている

「……これで良いのか?」

目の前の男性が私の眼をのぞく……と同時に私のプログラムが作動する……

 一一一一一一一一 角膜確認…登録

「では、次にこの者の左手を握って下さい」

造ってくれた人の声に従って目の前にいる男性が私の手を握る……と同時に私のプログラムがまた作動する……と同時にカチッと親指から音がする……

「いたっ!!」

目の前の男性が言ったと同時に一歩下がる……

 一一一一一一一一 DNA確認…登録

「少し血を出しただけです害はありません」

私を造った人が言いながら私の頭の中で何かをプログラムしている……

 一一一一一一一一 認識…認識……私が存在している理由の認識

目の前にいる男性に近付く……

「初メマシテ、ゴ主人様……マスター…私二名前ヲ付ケテ下サイ」

目の前にいる男性が私に言う

「君の名前は……そう、トマ…私だけの機械人形だ」

「ハイ了解致シマシタ。私ノ名ハ“トマ”デス」



……最初の最優先事項の記憶……破損なし。そして次の記憶のデータを見る……

上にあがる(となりのページへ)→


 マスターの最後の命令の記憶 一一一一一一一一

「…トマ、私の息子だ知っているだろう?」

マスターが私に語りかける

「ハイ、マスター」

「……今度からこの子がお前のマスターとなる…」

寂しそうにつぶやくマスター。私を造った人の声の記憶が蘇る

一一一一一一一 歳をとり死期を感じると今度は違う事を言ってきます

マスターは人でいう所の歳をとった……と言うべきであろう。だが私にとってはマスターはマスターであり私のプログラムはマスターの命令が最優先事項として造られている……
「記憶シマス。条件等ガアルナラ提示シテ下サイ」

マスターはうなずき条件を言う

「私がマスターとしてプログラムした最初の2つの登録と同じ事をする事が条件で必ずマスターと呼んだ者とマスターと呼ぶ者とトマの3人だけである事が必須条件である。他の者がその行為を見る事も聞く事も許されない」

「了解致シマシタ。」

「又この条件に関しては今後一切口にする事は出来ない。最優先事項とする」

「了解致シマシタ。最優先事項トシマス」


 ……そして契約とも言うべき行為は繰り返され私はその度に新たなマスターを呼び仕える。しかしそれも又、私の本当の主人であるマスターの命令があってこその行動であり例えもうこの世に存在をしなくてもそのプログラムに変更はありえない。それが私が造られた理由であり存在する意味なのだから一一一




サリエルは事務所に戻ると即座に依頼主であるカイトの携帯に電話をいれる

「……現在お掛けになっている電話番号は電源が切られているか電波の届かない場所に……」と電話サービスセンターからの言葉が聞こえてくる

一一一通じない……帰りの列車の中なのだろうか?……少し早くかけ過ぎたのかもしれない……だがしかし…なんなんだ?この不安は……??あの時も不安だったはずなのに…なぜ俺はあの時カイトを1人にして帰ったのだろう?……

後悔をしつつも、どこかで大丈夫だ。気にし過ぎだ。と思う自分もいる。

その時、また泣いている子供の頃の自分が蘇る……しかし今度はだっこ人形を持っていない……ただ泣いているだけ……

首を横に振り自分自身に言い聞かせる

一一一一一分かっている!後悔はしたくない!!

すぐ事務所を出て車に乗り込み車のエンジンを掛けながら携帯で屋敷に電話をかける。屋敷にはすぐに繋がって屋敷の主人であるハイデル氏に取次いでもらう。

「……何のようだ?」

彼のいつもの仏頂面な返事に心無しか少し安心をする。

………カイトだけでなく俺はこいつの心配もしていたのか?

意外な自分に少々驚きながらも用件を手短に話す

8ページ目へ→