「…キライではなく恐いのかもしれない…」
そう言いながら子供の頃の泣いている自分の姿が思い浮かんで来る…手にあるのは自分の名前を呼ぶだけのだっこ人形。しかし自分はその名前を聞きながら“違う!違うよ〜!!”と泣き叫ぶ……。
「恐い…のですか?えっと…いつか壊れて暴走とか…するから?」
依頼主のあまりにも的外れな答えに思わず苦笑をしてしまったが自分の説明不足のせいなのだと少し悪い気もしてしまい苦笑した口を手でふさぎながら
「……すいません、そういう意味ではなく……情が移るというか簡単に言ってしまうと物(モノ)を者(もの)として感じる事が恐いのです」
「機械人形を人間としてみてしまう事……ですか」
そう言った依頼主の言葉に又自分の子供の頃の泣いている姿を思いだす…
-----?俺はあのだっこ人形を人間と思っていたのだろうか?いや違う……そうではなくて……
何かを掴みかけたような気がしたのだが……しかし、そんな感情とは別に自然に口が動く
「そう、人間だけでなく動物やそういった姿をしているとね、人は錯覚を起こしてしまう…プログラムだけではない感情があるのではないかと……物ではなく生物としてみてしまう事が……形で惑わされている自分が……」
何を個人的な感情を言っているのかと自分自身に焦りながらも依頼主に気付かれないように本来の仕事をする自分に戻るように営業スマイルをしながら
「姿形を変えただけの機械でしかないのにね。さて何を注文しましょうか?カイト君」
とメニューを広げて話題をそらそうと依頼主を見ると彼は違う席の客の注文を聞いている機械人形のウエイトレスを見て一人事のように
「……そう、どれだけ人のように見えても話す事が出来てもその範囲(プログラム)で行動しているだけの……目的の為に造られたもの…」
そう言った依頼主に対して何かを言いたいのだが何も言えず……気付けば自分の子供の頃の話をしていた……
「…子供の頃にね、だっこ人形を買ってもらったんですよ。それも録音した名前を呼ぶだけの安物の。でもその頃はとても嬉しくてね、母親にせがんで自分の名前を録音してもらってすごく大事にしていたのですが家に遊びに来た従兄弟(いとこ)がいたずらで声を変えてしまって……それで私はすごく泣いて……母親がもう一度声を入れ直しても“違う!違うよ〜”って私は泣いてばかりで結局その人形はそのままどこかにいってしまったのですが……何故か時々その事を思い出しては、なぜ違うのか何が違うのか一体何を泣いているのかを考えてしまう時があるのですよ」
そんな訳も分からない話をなぜ依頼主にしてしまうのか……自分で自分に驚いているのだが依頼主もなぜか呆れた顔もせずに
「……分かるといいですね」
と言う。果たしてその言葉に真意があるのかは分からないが
-------その答えを君が見つけてくれる気がする……
なぜかそう思ってしまうのは自分の思い違いなのだろうか……?
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