怒りのほこ先が原因の機械人形にいくが機械人形なので動揺もする事もない。いや自分がなぜ怒られている事さえ分からないのではないだろうか?。……男は今さらながら高額な金で買った事が悔やまれる。しかし返品は出来ない。
-----確かにこの機械人形を買う前にこの機械人形について説明はしてもらってはいる。しかしこれほどとは……
その時の機械人形について説明したスーツ姿の男の言葉が蘇る
「この機械人形ですが知識や記録などは消去されずに残っています。ただ、どういう仕組みかは分からないのですが「主人を認識して仕える」という記憶操作が独特で亡くなられた先代はそれを教えず急な事故で逝ってしまった為、誰も操作方法は分かりません。こちらの方でも調べては見ましたが、製造をされてからもう100年以上は経っているという事以外は誰が造ったのかも分からない状況です。それを了解した上で書類の事項を良く読んでサインをして下さい」
今にして思えば考えが浅はかだった。破産をしたと言えども名家は名家だ。主人と言わない機械人形をそのままにするはずがなく何らかの手は尽くしたはずだと考えるべきだった。しかし成り上がりでここまで来た自分にとっては魅力のある機械人形だった事も確かなのだ。今後行われる会議やパーティで名家だった機械人形を連れて歩くという事は自分自身の今の地位を象徴するにふさわしいはず……であった。そう「御主人さま」と自分を呼びさえすれば……。
「あの……ハイデル氏…」
と申し訳無さそうに科学者はその男の名を言う。
男も自分の名前を言われてふと我にかえるが今も変わらない状況を再確認するのみ。だが役に立たない科学者達に言う言葉は決まっていた
「……さっさと帰れ……」
「えっ??」
一瞬、何を言っているのか分からないと言った感じの科学者達にもう一度同じ言葉を付け加えて今度は良く分かるように声も荒げ
「ささっと帰れと言っているんだ!!これ以上、役に立たないお前達に払う金などない!!分かったか?!」
その怒りにも満ちた言葉に今の状況を把握した科学者達。結果はどうであれ自分達なりにがんばった事に対しての態度がこれかと思いつつも所詮は雇われの身……不満は残りつつも素直に従って部屋を出ていくしかない。
科学者達が出ていって聞こえるのは機械音のみ。その中でようやく落ち着いてきたのか今後この機械人形をどう対処しようかと悩んでいるその時であった。
プルルルル〜〜
スーツのポケットから電話機の音が鳴り響く。画面付きの電話機を胸ポケットから取り出してボタンを押すと相手の顔が出て来て用件を言う
「御友人のサリエル氏が来られましたが、いかが致しましょうか?」
----友人なのではない!俺が雇ってやっている探偵だ!
と心の中で叫んではいるものの言えないのは、まだ友人だと思っているからなのか、それとも昔の自分を知っているという負い目からなのか……?
「ああ、そう言えば機械人形を見に来たいと言っていたな。分かった、今から上に上がるから広間で待たせておいてくれ」
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