しかし博士はカイトの言う事を無視してルチアの腕をまっすぐのばせるぐらいの高さの長方形の鉄の台を運んできてルチアの右隣に置いてからルチアの右腕をのせる
「……博士!!データを-----」
「カイト……大丈夫ヨ」
ルチアはカイトを安心させるかのように微笑む。
「だけどルチア、記録回路データに何かあったら……。」
黙っていた博士は少し困った顔をしながらため息をひとつつく
「…カイト……ルチアのデータのバックアップはとらん。」
ただそれだけ言うと博士は向こうの奥のテーブルの方に向かいカイトも博士の後につづく。奥には扉や区切りはないが部屋の一室のような空間があり、そこには山積みになっている段ボールの箱がたくさん積んであり、開いている箱もあれば手付かずのまま置いてある箱もある。机の上にはその箱の中身であろう機械人形の腕が何体か解体されて置いてあった。机の周りを見ながらカイトは山積みに置いてある箱に貼ってある配達先の伝票用紙に気づく。発送先は……
「3PAI(スリーピーアイ)……」
カイトの言葉に少し興味があったのか博士はカイトの方を向き
「ほう……知っているのか?」
「機械を扱う人なら知らない人はいないと思います。砂漠の果てにあるという機械都市……優れた技術があるらしいですが砂漠の果てにある事と入国許可が難しいと言う事だけは聞いた事はあります。僕はまだ行った事はありませんが……」
「……入国が難しいだけではない。入国金も高いときている。まあ、わしらのような者では行けん所だ。通販でさえも、どれも高くてラッセル卿の支援がなければここまで買う事は出来んよ」
“……そこまで価値があるという事かな?彼女は----------”
頭の中で別の人格の声が聞こえるが特に気にはしなかった。カイトの関心は3PAIから来た腕にいっていた。
「博士、失礼ですがこの精巧な腕ではルチアの身体には合わないのでは?」
ルチアの内部を見たわけではないが身体を見ただけでも今迄見たどの機械人形よりも造りが劣っていると言っていい。しかし博士1人であそこまで造ったと言うのだから出来栄えはどうであれ凄い事だ。そして博士もその事は分かっているらしく
「ああ、使うのは中身ではなく、その表面の皮の部分だけだ。ルチアの腕の太さや長さが微妙に合わない所はあるが何回か試作品の腕で試しているから大丈夫だろう」
いくら何度か試しているとはいえ、やはり記録回路のデータは機械人形とって重要だ。なぜ博士がバックアップをとろうとしないのかカイトには分からない。
その時カイトはまだ奥にある大きめの箱に気が付く。どうみても腕が入っている箱とは3倍以上の大きさがある。
----------この大きさは……
「……博士あれは……ボディ……ですか?」
「……ああ、腕が成功すればボディもしようと思っておる。カイト、君が儂に何を言いたいのかは分かっておる。だが儂はルチアの事に関して君と討論するつもりはないし君の言う事を聞くきもない。……だが-----」
「………」
「だがルチア記憶回路は……儂の命に代えても傷一つつけさせん。」
その言葉は決意と誓いに近いものに感じられたが博士がいくら言った所でルチアが危険な事には変わりない。しかしカイトの今の立場では博士にそれ以上言う事は出来ないし言う権利もない。そして頭の中でもう1人の別の人格が
“……しないのではなく出来ないのかも……な”
----------?出来ない?…それはどういう意味だ?
“……さあ…なんとなく…そんな気がするだけだ。”
5ページ目へ行く
|