ページ 1 2 3 4 5 6 7
表紙 8 9 10 11 12

----------ここに呼ばれた正式な騎士----------

自分のその言葉にその場にいた騎士達全員が驚いているのが見ても分かる。そう自分に向けられている騎士達の視線は疑惑と驚きと不審に満ちた眼であり自分がここに迎えられていない人間だとすぐに理解出来るほどの視線。

……大丈夫、しっかりしろ。私は間違った事は言ってはいない。

心の中で自分を勇気づけてから、ひと呼吸し騎士達に向かって

「私が女だから騎士として不服だと言うのか?」

きつく言い放ちながら自分を見る騎士達を1人ずつ睨み付ける。その場にいた騎士達はその言葉と睨み付けられた事で自分達が何で驚いているのか目の前の女性騎士には分かっていないのだと気づく

「いや……すまない驚かせてしまって、お嬢ちゃ……じゃなくって……」

状況に気づき最初に謝ったのはオスカーだった。オスカーは目の前にいる女騎士に

「先程の無礼は許してくれ。その…女の騎士だから驚いたわけじゃないんだ。改めて騎士として自己紹介をさせてくれ。俺はセフィーロ国から来た炎の騎士オスカーだ。そして同じ国の-----」

オスカーは後ろにいたオリヴィエの方を向きオリヴィエもそれに合わせて少し前に出て軽く会釈をしながら

「はじめまして、美の騎士オリヴィエです。」

そうして他の騎士達も次々と挨拶をしていく。急に変わった騎士達の態度に少々驚きながらも最後である自分の番の紹介になった。

「……は…はじめまして私はアンジ……いえ、アンシェリオンと言います。私は……ルーティス国の水の騎士の代わりとして来た……太陽の騎士です。」

その女騎士の言葉に騎士達全員が驚きの色を隠せない表情になり、鋼の騎士のゼフェルは

「おい、おい、嘘だろ?なんで太陽の騎士がここにいるんだよ?!!」

「??いてはダメなのか?」

何も知らないのか女騎士アンシェリオンは鋼の騎士ゼフェルの言葉を逆に問いかけ鋼の騎士は、その問いかけに何を言っていいのか分からない表情になる。

「……我々騎士と太陽の騎士との力の差がどれほどのものか知っているか?」

少しきつめの口調で光の騎士ジュリアスは女騎士アンシェリオンに問いかける。

「……いえ、私はその……あまり詳しくは知らないのです。聖騎士の側近の騎士という事ぐらいしか……。」

-----そう…父は私がいくら聞いても聖騎士や聖女王に関しての事はあまり教えてはくれず私が聞く度に父は悲しそうな顔をするので、いつの間にか聞くのを止めてしまった。

光の騎士ジュリアスが女騎士アンシェリオンに分かるように簡単に説明をし始める

「……太陽の騎士と月の騎士の2人が合わさった力が聖騎士と同等の力と言われ、4つの大国に2人ずついる我々騎士……まあ水の騎士はここにはいないが……それは置いといて……我々騎士8人と放浪の地の騎士1人の合わせた9人の騎士の力が太陽の騎士叉は月の騎士と同等の力と言われている。……分かるか?」

女騎士アンシェリオンは少し考えながら

「はい……太陽の騎士は9人の騎士達の力と同等と言う事は……」

「そうだよ!!全然勝ち目がないんだよ!俺達、騎士は!!」

女騎士アンシェリオンが言い終わらないうちに横から鋼の騎士ゼフェルが口を挟んで来た。その言葉に女騎士アンシェリオンは申し訳ない表情をしながらも

「……それでも……私は……この聖騎士の継承の試合に出なければならない。私が知りたい事を知る為にも……。」

女騎士アンシェリオンがそう言いながら右手の手袋を外す。その手には神器の手甲がはめれていて、その手甲の紋章を見て騎士達は改めて目の前にいる女騎士が太陽の騎士だと確信をした。

「……知りたい事を知る為に……それは聖騎士殿が言った事なのか?」

騎士達が驚いている中、ただ1人無表情だった闇の騎士クラヴィスが口を開く。女騎士アンシェリオンはうなずきながら

「…そうです。私にこの試験に出るように言ったのは聖騎士殿です。」

騎士達がざわめきたつ。力の差は歴然なのに聖騎士が出る事を勧めたと言う事は目の前にいる女性騎士に聖騎士の後継者に決めたと言ったようなものなのだから当たり前のざわめきであった。
上にあがる(となりのページへ)→

「……認めない。認めないぜ!!!俺は!!まだ何も始まちゃいねえのに!!俺は…俺は…まだ何もしちゃいないんだ!!」

大声で鋼の騎士ゼフェルは誰に向かって言うわけでもなく、ただ自分の怒りをそのまま言葉にして吐き続ける。他の騎士達も何も言わないが思いは同じらしくただ黙ってその怒りの言葉を聞いている。

その時、部屋の奥からパンパンと手を叩く音が聞こえ

「そのような大声を出すとは。騎士としてみっともないですよ、鋼の騎士殿」

奥から手を叩きながら忠告をする男性。肩まである水色の髪に前髪を少しだけ残して後はオールバックにし聖騎士に仕える管理者用の制服を着ている為どうやらこの聖騎士試験の関係者のようだ。眼鏡の奥の瞳はきびしく騎士達を見定めている。

「けっ!!なんだよお前は!!これがムカつかずにいられるかってんだ!!お前らが俺ら騎士を無視して勝手に聖騎士の後継者を決めているって聞いてムカつかない奴がいない方がおかしいじゃねえか!!そうだろ?」

鋼の騎士はいかにも正論だろと言わんばかりに吠えたてる。しかし男性は気にするわけでもなく眼鏡を手で上にあげながら自分の後ろにいる男性に

「……だそうですよ?聖騎士様」

「そうか……もう決まっていたとは私も知らなかったよ。エルンスト」

どうやら先程、鋼の騎士に忠告している眼鏡の男性の名はエルンストと言うらしくエルンストの後ろから出て来た男性は騎士達を見ながら

「聖騎士継承試験もまだ始まってもいないのに勝手に決められているとは……どういう事だい?」

聖騎士と呼ばれる男性はエルンストの横に出ると鋼の騎士の方へと視線を向ける。聖騎士…彼の面立ちは優しく腰まである長い金髪はとても良く手入れされていて前髪を少し残し後は後ろ髪とまとめて留めてある。両肩あての防具に白く長いマント青色の服装が良く似合う。しかし優しい面立ちではあるものの聖騎士と言われるだけあって威厳と気迫がその身にあり何気ない聖騎士の言葉でも鋼の騎士ゼフェルは少し怖じ気付きながら

「この女騎士の事だよ!太陽の騎士なんだろ?なら俺ら騎士がいくら戦ってもかなうわけないだろ!!違うのか?」

女騎士アンシェリオンを指さしながら聖騎士に言うが鋼の騎士ゼフェルの言う言葉には迫力はなく、ただ文句を言うような口調にしか聞こえない。

「なるほど。もう彼女の事は他の騎士達には紹介済みと言う事か。」

「そ…そうだよ。俺達騎士が…何の為にここに来たのか……」

怒りを思いだしながら鋼の騎士ゼフェルは相手が聖騎士だと言う事も気にせずに言葉を続け吐き捨てるように

「何の為に、ここに来たのか分かっているのかよ?!!」

聖騎士はうなずきながら鋼の騎士ゼフェルに優しくさとすように

「うん、分かっているよ。聖地(ここ)は私の聖騎士の後継者を決める所だからね。エルンスト」

「はい、聖騎士様。」

聖騎士の隣で騎士達に届くような声でエルンストが続けて言葉を放つ

「まず誤解があるようですので言っておきますがアンシェリオン殿は確かに太陽の騎士ではあります!……しかし、まだ神器には認められてはおりません!!」

「……認められていない…って…それじゃあ…」

騎士達が驚く中で口を開いたのは以外にもルーティス国の緑の騎士マルセルだった。自分の国の水の騎士の代わりに来た騎士についても緑の騎士マルセルは何も知らなかったようである。エルンストはそんな緑の騎士マルセルの心境などおかまいなしに

「そうです。認められないと言う事は神器は扱えないと言う事になります。それは騎士と戦う以前の問題………」

エルンストの次の言葉を言う間でもなく光の騎士ジュリアスが言葉をはさむ

「丸腰の人間と戦えるわけがない。神器に認められない事…それは神器が扱えないと言う事で鎧も剣も使えない事と同じ。本当は神器に認められない時点で騎士になる資格はないのだが……。」

言いながらエルンストに視線をやる。そしてエルンストはその視線を外す事なく、その言葉にうなずきながら

「……そうなりますが今の時点では-----と言う事お忘れなきよう。光の騎士殿」


4ページ目へはもうしばらくお待ち下さい(上に行く)