ページ 1 2 3 4 5 6 7
表紙 8 9 10 11 12

昔、聖女王との約束により、それぞれに異なる精霊の力を宿した神器を2つずつ与えられた4つの大国…1つはエリューシオン国、1つはフェリシア国、1つはルーティス国、1つはセフィーロ国。大地はこの4つの大国で支配されており神器はこの大国と共に神器が選んだ者と一緒に国と大地と人々を守ってゆく。そして人々は神器を持つ勇姿ある者を敬意を評して“騎士”と呼ぶようになる。

-----神器…それは精霊の意志であり力でもあるため本来定まった『形』がないのだが日常でも身に付けやすい物として額あて、腕輪、手甲(てこう)に分かれている。意志を持っている為ある時は騎士の話し相手となり又ある時は導く者となって手助けをし実戦になると装備や武器に変化をするのである。

そして4つの大国がある大地とは別に空に浮かぶ地がある。その地は小国と言うよりも都市にちかい規模で聖女王と聖騎士が住む城とその城下に街が1つあるのみ。だがその地はどのような飛行船を使っても行く事は出来ず聖女王が認めた者のみが行ける為、人々はそんな空飛ぶ地を聖女王の憧れと敬意を持って「聖地」と呼ぶのであった。

今、何百年かに1度あると言われている聖騎士の世代交代の為にその空に浮かぶ聖なる地「聖地」に神器を持つ騎士達が呼び出された。
聖地の城の広間に集められた国々の騎士達は次の指示を待つ状態で待機している。4つの大国に神器をもつ騎士が2人ずつの為、集まっている騎士達は8人いなければならないのだが今、広間にいるのはなぜか7人だけ。国々に2人ずつ来ている騎士達は自然と1人しか来ていない騎士に眼がいくのは仕方のない事なのだろう。
最初にその事を話し始めたのはフェリシア国から来た2人の騎士“鋼の騎士”と“風の騎士”2人であった。

「なあ、ランディどう思う?やっぱりあの噂は本当なんだろうか?」

見た目は17歳の青年で鋼の騎士にふさわしい動きやすさを重視した機械的な服装を着こなし短かめの銀髪の髪を全体的に立たせ赤い瞳を好奇心で満ちた眼で見ながらゼフェルは素直に自分の気持ちを言ったのだが、それに対して風の騎士ランディは

「う〜ん、確かに気になるけど聞くのは失礼じゃないかな……」

見た目は18歳の少し長めの茶髪に騎士にふさわしい防具の肩当てと白マントが良く似合っているさわやかな青年ランディが悩みながら言う。

「ふん、いい子ちゃんはこれだから……」

ゼフェルは同意を求めたのが間違いだったかのようにランディを無視して話しの中心人物である騎士の方に歩いて声をかける

「よお、あんた……ルーティス国の緑の騎士…だよな?」

長い金髪を後ろに止め清楚な明るい緑色の服装を着こなしている。しかし騎士にしてはまだ少し幼さが残っている感じの少年はゼフェルの問いに

「僕の神器の紋章を見て分かりませんか?鋼の騎士殿」

冷静とも警戒しているとも言われる口調に鋼の騎士ゼフェルは気にもしない様子で、わざとらしく緑の騎士の周りを見回しながら

「…水の騎士が来ていないようだな。なあ、あのうわさは本当なのか?」

「うわさ?」

「そうだ何十年か前に水の騎士が、その証である水の神器を置いて突然姿を消した。そして水の神器もそれ以来新しい主(あるじ)を持たず姿を消した水の騎士の帰りをずっと待っているという話しだ。同じルーティス国の騎士なんだから何か知っているんだろ?」

その問いかけに屋敷中に響く声で

「-----知りません!!僕は……僕…は…なにも…」

そのまま、こぶしを握りしめたままうつむいて黙ってしまい、その沈黙の空気に鋼の騎士ゼフェルもバツが悪そうな顔をする。

『『…マルセル』』

緑の神器は主(あるじ)である緑の騎士の心に呼びかけるが緑の騎士は、その呼びかけにも答えずただ黙っていた。

上にあがる(となりのページへ)→

「あらら…黙ちゃったわね……緑の騎士」

セフィーロ国から来た2人の騎士の内の一人、見た目は女っぽい派手な服装に金髪の髪に前髪はピンク色に染め男性であるが化粧をしている美の騎士のオリヴィエが少し残念そうに言う。

「すぐ来て早々に噂の真偽が分かるとは思っていなかったけどな。」

同じセフィーロ国の騎士の炎の騎士オスカーが仕方がないと言った調子で言う。オスカーは男前の顔だちに炎の騎士らしい情熱的な赤い髪と青い瞳そして赤マントに赤の色合いの服装が良く似合っていた。
そして、緑の騎士と鋼の騎士の2人の行動をだた黙って見守っていたエリューシオン国から来た2人の騎士。1人は大人びた顔つきに長い金髪に切れ長の青い瞳に青いマント、首まである堅めの襟に白地の服には見事な金色の刺繍がほどこされている。そんな気品ある服装がふさわしくもある光の騎士ジュリアス。

「……鋼の騎士にも困ったものだ…。何をしに聖地(ここ)に来たのか分かっているのだろうか……?」

光の騎士ジュリアスが少々呆れ気味に言う。一緒に同行しているもう一人の闇の騎士。光の騎士とは同年令のようだが服装と印象も対象的で長い黒髪に紫の瞳そして白いマントに黒めの服装が水晶の額あてと水晶の飾りによくはえていている。

「……あのうわさは誰もが知りたい事だし、これだけ待たされれば興味が緑の騎士の方へ行くのは仕方のない事だろう。」

「クラヴィス…我々はうわさの真偽を確かめに来たのではない。聖騎士になる為に聖地(ここ)に来ている事を忘れるな」

「……」

光の騎士ジュリアスの厳しい口調に闇の騎士クラヴィスは気にする事もなく緑の騎士と鋼の騎士の次の行動を見守っていた。

-----とその時、ギイ〜と扉が開く音と共に誰かが部屋に入って来た。その場にいる騎士達全員がその扉から入ってくる人物の方に眼を向け、入ってきた人物はその全員の視線にどうして良いか分からず閉じた扉を背にしたままその場に立ちすくんでしまった。

その頃、別の部屋では聖騎士が今回の聖騎士継承試験をする騎士達が全員揃った事を聞いていた。

「……いよいよだな」

これから始まる聖騎士継承試験。そして……出来るなら…過去の出来事の結末をこの眼で最後まで見届けたい……そう新しい聖騎士が決まるまでに-----。

「……聖騎士さま?」

いつもと違う聖騎士の様子に不安を感じ声をかけるエルンスト。その声に聖騎士はいつもの様子に戻り

「さて、行こうかエルンスト。騎士達が待つ広間に-----」


騎士達の広間では突然入ってきた人物…少し長めのウエーブのかかった金髪を後ろにくくり騎士のような服装をしている少し少女の面影が残る女性に注目していた。

「道に迷ったのかな?お嬢ちゃん」

----- …お…じょ…お嬢ちゃん??!!… -----

声をかけて来た炎の騎士オスカーの言葉に驚きつつも言い返す

「わ…私はお嬢ちゃんでもないし道に迷ってもいない!!ここに呼ばれた正式な騎士だ」

その言葉にその場にいた騎士達全員が驚く。確かに女性の騎士は少ないが今までにもいたし驚く事でもない。だが女性が騎士になったと言うだけで国中が知れ渡るぐらいに珍しい事でもあるのも事実だし、そしてなによりこの場にいない騎士はただ1人。先程話しをしていた行方不明の水の騎士だけだという事だ。


3ページ目へ行く