占い師の老婆の言葉にアリスは父親のエリオット神父を見ながらもオドオドと近付いていく。占い師の老婆はアリスの頭をなでた後、自分がしている小さい水晶のネックレスを外して、それをアリスの首にかける
「己の力に嘆く事はないよ。その力があるからこそ出会える出会いがある事を覚えておくがいい。愛しい我が血族の娘よ」
その占い師の言葉にアリスはキョトンとなりながら不思議そうに
「……?私…悲しくないわ?お父様も彼もいるもの」
アリスの言葉に占い師は悲しそうな嬉しそうな複雑な顔をしながらもアリスの頭をなで
「……そうだね。それは良い事だ。でもこの私の言葉も忘れないでおくれね、愛しい娘よ。……さて、アリスすまないが、あの男をここに呼んでくれないかね?」
あの男……その姿はどう見ても人には見えず髪は長くしかも血の色のように赤くなり顔だちは人なのだが眼は金眼で歯は牙のままに手は黒ずんだ色をしている男。アリスは彼を呼び占い師の老婆は再度アリスの頭をなでながら
「ありがとう、アリス。済まないが彼と2人だけで話をさせておくれ」
アリスは少しとまどいながらも
「……でも彼……最近言葉を教えたばかりだから……あまりお話は出来ないの。それに牙が邪魔をしてうまくしゃべれなくって……」
彼を気づかうアリスに占い師の老婆は優しくさとすように
「ありがとう、大丈夫だよ。私が彼に伝えたい事があるだけだから……そんなに話す事はないからね。心配せずにエリオットの所におゆきアリス」
アリスがエリオットの所に行くのを確認してから彼の方を見ると、彼はその場にいながらも眼はアリスの方へと向いている。
「よくお聞き、魔性を持つ者よ。……これは無数にある未来の内の最も可能性がある事だ。お前は近い将来、守るべき者の為に命を落とすだろう。」
占い師の言葉が分かるのか眼がアリスから占い師へといき
「……?ガ…マモ…ル…?」
「…今は分からなくてもよい。未来を変えるのも、その道を行くのも己自身。それだけは忘れず行くがよい。」
「……ワス……レナイ……」
男は分かっているのか分からないのか、それだけ言うとアリスの元へと戻っていく。占い師は少し困った顔をしつつも
「エリオット、次はお前だよ」
エリオット神父は不可解な顔をしながら占い師の方へといき
「??どうしたのだ?今日は何かいつもと違う。何かあったのか?」
その言葉に占い師は少し考えながら決意のある声で
「……お前にだけは言っておこうかね。私はある魔術師にこの力と命を捧げるのだよ。」
「魔術師に?!!なぜ…??」
「……少しでも長く我が血族達の命を守る為に。しかし…その為に悪しき破壊の神アモンが蘇る事だろう。…エリオットよ。秘術書を追うなとは言わぬ。だが魔術師には近付くな。これが私がお前に言ってやれる最後の言葉。覚えておいで」
占い師のその言葉に賛同出来ないと言わんばかりに
「……そんな恐ろしい事……どうか止めて下さい。我が血族の為にするべき事じゃない。」
涙ながらに訴えるその言葉に占い師は少し笑みを浮かべながら
「……倒す事も出来ない……逃げる事も出来ない。なら……我が血族達の為に。」
続けて占い師は力強く…そしてさとすようにエリオット神父に
「さあ、お行き。エリオット。お前の行く道に幸があらん事を!」
「……あなたの行く道にも幸がある事を祈ります」
エリオット神父は祈るような言葉を言いながらおじぎをするとアリス達を連れて部屋を出て行く。エリオット神父達が出て行った部屋で占い師の老婆は1人じっと水晶を見つめていた。……それからどれくらいの時間が経ったのか1人の男の声が部屋中に響く
「……さあ、約束通り迎えに来ましたよ。」
占い師の老婆は姿の見えない言葉にうなずきながら
---------私の命と力によって、この男は破壊の神アモンを手に入れ多くの人々の血が流れるだろう……。されど、多くの命を犠牲にしても守る者がある。我が血族よ。呪われし道を行く者達よ。短い時の我の守りの中で未来を切り開いて行く道を探すが良い。
……ある者は終わりを告げ、ある者にとっては始まりとなる。だが選ぶのは全て己のみ。例えそれが知らずに選んだ道であったとしても----------。
中編END
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