『汽車の中で……(シャドウハーツ1のGOOD編)』

ガタンゴトン…ガタンゴトン…汽車が走る。汽車の窓から見る外の風景は走る方向によって木々に光りがさえぎったり、さえぎらなかったり……ある時は町並みが見え、ある時は山々が広がる。俺達はどれぐらい寝ていたのだろうか……。俺はふと眼が覚めて俺の隣でもたれて小さな吐息で寝ている女性をみる。

「……アリス」

そっと彼女の名前をささやくが彼女が起きる様子はない。だけど彼女の寝顔をいや、そばに彼女がいる。……ただそれだけの事で自分がこんなにも幸せだと思うのがなんだか不思議で仕方がない……。アリスに会う前の自分……ただ生きて来た自分。あの頃は1人で生きて生けると思っていた自分。しかし今はもう1人では生きていたくないと思う自分がいる…。

そっと彼女の寝顔をもう一度見る。銀髪の髪……長い髪を三つ編みに束ねて後ろの青いリボンで結んでいるのだが、このリボンを外した髪はきっとサラサラしたやわらかい手触りがあるのだろうといつも思いながら見ていた。彼女の顔の肌…何度か触った事があるがいつもやわらかくって暖かい…。今は閉じているが彼女の瞳は優しいブルー色……。彼女の服…緑色の清楚な服……俺が思うに彼女は着やせするタイプだと思うのできっと胸は俺が思っているよりも…おお…き……

「……んっ…?ウル??」

彼女が眼を覚ます。悪い事を考えていた訳ではないのだが……なぜか焦ってしまう。

「……えっと……その…」

「??どうしたの?ウル?もしかして私がもたれて寝てたから寝むれなかった?」

状況を確認するように問いかける彼女。

「いや……大丈夫ちょっと眼が覚めただけだから。まだ目的の駅まで時間があるから寝ててもいいぜ」

彼女の隣にいるウルと呼ばれている男性。茶色のコートに赤色のシャツに黒のズボンを着こなし体格も良く背も高いが茶色の髪の毛はあまり手入れはされておらず紅い瞳で眼つきも悪い為なのか彼を知らない人はいつも一歩彼から遠ざかってしまう。しかし彼はそんな事は気にせずいつも堂々としているのに今はなぜか焦っていて顔も少し赤い…

「………ねえ、ウル。私に何か隠してない?」

真相を知ろうとウルに近付き彼の瞳を見る。

「??いや、何も隠してないぜ?」

「…でも…なんだかウル……顔が赤いし……熱でもあるのかしら?」

そう言いながらウルの額に手を当てるアリス

「……熱は……ないみたいね」

「……アリス」

そんなアリスがあまりにも可愛いくそして愛しく思わず彼女に近付き、唇にキスをする。

「????!!!???」

唇が触れた途端、驚きながらも後ろにさがってウルから離れるアリス。しかし座席に座っている出来事なのでそんなに後ろにはさがれない。顔を真っ赤にしながら口を手で押さえながら周りの様子を見る。

「大丈夫だって。あれぐらいじゃ誰も気づかないって」

「ウル!!人前では……!!」

「うん、うん、分かってるって」

無邪気に笑うウル。だがアリスにとっては『人前でキスをする事』がすごく恥ずかしくウルが人前でする度に注意をしてはいるものの一向に止める気配がない。きっと自分が恥ずかしがっている姿を見るのがウルには楽しいのだろう。

上へ行く

アリスはふと何かを思いだしウルに強気な口調で

「……わかったわ!!ウル!自分が嫌な事をされる恥ずかしさを教えてあげる」

そう言うとウルの頭を撫で撫でしだしたアリス

「へっ???」

ウルにはアリスがなんで自分の頭を撫でるのかが分からない……がアリスの言っている俺の恥ずかしい事ってこれの事??………なのか?

「……」

「……」

頭をなでられているウルは恥ずかしがる様子もなく、ただ呆然とアリスに頭をなでられ続けている。アリスはそんなウルの態度を不思議そうに見ながら

「えっと……ウル……はずかしくない……の?」

「……別に…」

「??でもマルガリータさんがウルの頭を撫でた時…ウル…怒っていたわよね??」

「えっ?マルガリータ??………」

そう言えばマルガリータと別れる時に頭を撫でられて

『子供(ガキ)じゃないんだから恥ずかしいだろ!!』

て言って俺、怒ったな…………。そんな事を思いだしながらもウルは自分の頭をなでているアリスの手の感触が気持ちいいので

「う〜〜ん……でもアリスならいいかも…」

その言葉にウルには何を言っても何をしても無駄だと悟ったアリス

「……もういいわ」

頭をなでるのを止めて、そっぽを向くアリス。目的地の駅に着いてもアリスはこちらを見てくれず俺は少し不安になりながらもアリスに近付き様子を見ながら声をかける。

「アリス……」

その声に反応して彼女が俺をチラッと見る。俺はそんな彼女を見て安心する。しかしアリスはまだ怒っているらしく又、顔をそむける。そんなアリスの態度にウルは困ったように自分の髪をさわりながら

「ごめん。俺が悪かった。……だから……」

その言葉にアリスはチラッと俺を見て

「…反省した……?」

「反省……うん!!した!した!」

俺は笑顔で答えるが彼女はそんな俺の笑顔が不服らしく少し諦め気味の顔になりながら俺だけに聞こえるように

「……本当に反省してね」

再度念を押すように言いながらもアリスは俺の腕に手をそえ顔を腕にもたれかける。そんなアリスの表情、しぐさがまた愛おしい…。彼女を愛しいと思う度にアリスにキスをしたい、抱き締めたいという想いをそして行動を君が俺にさせている事に君は気づいているのだろうか?。そしてその度に俺は確認してしまう。俺はもう1人では生きていけない事を-----。2人で…そうアリスとずっと一緒に生きていきたい……それだけが今の俺の唯一の望み-----。


END